書籍紹介『食べものから学ぶ世界史』平賀緑

世界史

記念すべき初回の投稿は、書籍紹介!

岩波ジュニア新書から平賀緑さん著『食べものから学ぶ世界史——人も自然も壊さない経済とは?』をご紹介します。

「人気ブログランキング」に参加しています
「にほんブログ村」に参加しています

どんな本?

岩波ジュニア新書は小中学生から大人まで幅広く読める入門新書を謳い文句に、岩波書店さんから出版されています。小中学生を対象に書かれているため、文章が平易でとても読みやすいのが特徴です。(さすがに小学生には内容が難しいものもあるので、中学生からがおすすめ)

以前、岩波ジュニア新書の名著『砂糖の世界史』(川北稔 著)を読んだことがあります。これがとても面白く、かつ読みやすかった。そこからいい大人であるにもかかわらず、岩波ジュニア新書を手に取る機会が増えました。とはいえ、読書好きな私が読んでも十分読み応えのあるシリーズです。

そんな同シリーズの中の一冊が今回紹介する、『食べものから学ぶ世界史』です。

『砂糖の世界史』から食糧つながりということで、手に取ってみました。

 命か経済か、なぜどちらかを選ばなくてはいけないのでしょう。経済成長して社会は豊かになったはずなのに、生活に困る人も増え、自然もますます破壊されている。

確かにその通りです。世の中は物で溢れ、みんなが10万円以上もするスマホを片手に生活している。お腹が空いたらコンビニやファストフードで簡単に食べ物が手に入る。

その反面、世界の飢餓人口は7〜8億人いるといわれ、約20億人が食料不安に面している。

かと思えば、肥満や生活習慣病などによって寿命を縮める人がいる。

各地でフードロスが問題となり、世界の食料システムは環境にまで大きな影響を与えている。

こんなにさまざまな問題に直面しながらもなお、「経済成長」が目指されるのはなぜなのでしょうか?

そしてこの現状を乗り越えて、人も自然も生き延びるためにはどうしたらよいのでしょうか?

本書では、砂糖、小麦、トウモロコシ、豚肉などの身近な食べものから資本主義経済の成り立ちを見ていくことで、その問いに迫ろうとしています。

5つ星総合評価

  • 読みやすさ ☆☆☆☆
  • 面白さ   ☆☆☆
  • ためになる ☆☆☆☆

  ※しばとしょの個人的な感想です。

岩波ジュニア新書ということで、前半は若年層を意識した語り口でしたが、後半になるにつれて経済に関する専門用語が当たり前のように飛び交うようになり、少し置いていかれている感があるかもしれません。

しかし、話がテンポよく進むので、他の経済関連の本よりも読みやすいことは間違いないです。

人間が狩猟採集民であった頃から、現在の過剰なまでに豊かな食生活を手に入れるまでの歴史が概観されています。

人類の歴史や、食に関連する経済学などに少しでも関心があれば、興味深く読める内容です。

何気なく買ったり食べてたりしているものが、どんな歴史や経緯をたどってここにあるのかを改めて知ることができます。

そして、その食べものの裏側にある経済のうねりや国々の思惑などにも気付かされます。

どんなことを学べる?

つながりがわかる

機械制大工業がさかんになった産業革命の時代では、労働者は劣悪な環境で長時間働くことになりました。

自分で食料を生産する時間はおろか、料理する時間すらなくなります。

資本家の視点に立つと、その者たちをどうやって食べさせ、労働力を確保するかが問題になります。

そこで、新世界や植民地から輸入した農産物(小麦パン、砂糖入りの紅茶)で手っ取り早く彼らの胃袋を満たす。

こうした需要が三角貿易に繋がっていきます。

このように、世界の歴史の動きが人々の食生活と密接に繋がっていることがわかります。

日本の食生活が洋風化した背景がわかる

近年の日本人の食生活が洋風化したのは、人々が高カロリー・高脂質のものを好むようになったからだと思っていませんか?

実はそんなに単純なものではないのです。

大量生産により食料が過剰に余ってしまったアメリカは、小麦や大豆の海外市場を日本に開拓するため、日本政府や日本の大手企業に働きかけました。

その結果日本では「粉食」が推進されたり、洋食や中華料理を紹介するキッチンカーが登場したり、油食を推進する「フライパン運動」が始められたりしました。

これらのキャンペーンは、日本の政府や企業も積極的に推し進めたと言います。

我々の生活が変化する背景には、国家や大企業の思惑が働いているのです。

こんな人におすすめ

  • 歴史好きな人
  • わたしたちの食生活の変化とその背景に興味がある人
  • 今食べているもののルーツが知りたい人

まとめ

今回は岩波ジュニア新書から平賀緑さん著『食べものから学ぶ世界史——人も自然も壊さない経済とは?』をご紹介しました。

しっかり読み込むには、世界史や経済学の知識がやや必要ではありますが、食料という身近な内容なので、新しい発見がある本だと思います。

『砂糖の世界史』と合わせて、ぜひ手に取ってみてください。

Amazon.co.jp

コメント

タイトルとURLをコピーしました