今回の書籍紹介は原田マハさん著『常設展示室』をご紹介します。
最近アートに触れていますか?忙しくてそんな暇がない!という人も多いかもしれませんね。
この本を開くと、まるで美術館の展示室に行ったような気分が味わえます!
そんなあなたのために、この記事ではこの本の大まかな内容と、どんな人におすすめなのかをざっくりと分かりやすく紹介します。

この記事はあくまでも「紹介」であり、「感想・書評」ではありません。
皆さんの本選びの参考にしていただくのが目的なので、クリティカルなネタバレはしないようにしています。
こんな人におすすめ

アートに関連した小説を多く書かれている原田マハさんの短編集。
『楽園のカンヴァス』を読んで以来大好きな作家さんです。
どんな本?

『常設展示室』は、原田マハさんの短編作品集です。
主に30〜40代の女性を主人公とした全6篇が収録されています。
著者の原田マハさんは、早稲田大学で美術史科を卒業。ニューヨーク近代美術館(MoMA)でキュレーターとして勤務されていた経歴をもちます。
その後、小説家として活動し、デビュー作『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を受賞。『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞、R-40本屋さん大賞などを受賞し、ベストセラー作家の仲間入りをされました。
他にも『暗幕のゲルニカ』『ジヴェルニーの食卓』『たゆたえども沈まず』など、アートに関連する小説を多数発表されています。
本書は、そんな原田マハさんのアート小説の魅力を手軽に堪能できる一冊です。
書籍情報
- 常設展示室 / 原田マハ
- 新潮社
- 2018年11月20日 初版発行
- 1,400円+税
- 190ページ

原田マハさんの本を読んだことのない方は、この短編集から入るのも良いかもしれませんね。
今回は図書館で単行本をお借りして読みました。
ちなみに厚みはこんな感じ。(iPhone15との比較です)

──この世でもっとも贅沢なこと。それは、豪華なものをものを身にまとうことではなく、それを脱ぎ捨てることだ。 (豪奢 Luxe)
本書は、人生の岐路に立つ女性たちと、その瞬間に彼女たちに寄り添う絵画が織りなす6つの物語で構成されています。
それぞれに境遇や立場の違う主人公の女性たちは、絵画との出会いを通して自分にとって大切なものの存在に気づいていきます。
物語の中に出てくる絵画は有名なものからそこまでメジャーとは言えないものまで様々ですが、そこはさすが原田マハさん。どれも主人公の感情を反映させた素敵な作品を登場させてくれています。
1冊通して読むと、まさに美術館の展示室に飾られた一連の作品たちを鑑賞しているような気分になれます。
5つ星総合評価
- 読みやすさ ☆☆☆☆☆
- 面白さ ☆☆☆
- ストーリー ☆☆☆
- 話題性 ☆☆☆
- おすすめ度 ☆☆☆☆
※しばとしょの個人的な感想です。
1つの物語はおよそ30ページほどで書かれているので、まとまった読書の時間が取れなくても読みやすいと思います。
短編なので、ストーリーに厚みは求められませんが、どれも心温まる読み心地のよさがあります。
なんといっても、原田マハさんの描く色彩感豊かな絵画の描写は短編でも健在です。

私は1日1篇読み進めて楽しみました。
1時間もあればひとつの物語を読み終えられるので、他の本との併読にも適しています。
あらすじ
- 群青 The Color of Life
- メトロポリタン美術館の教育部門スタッフである美青は、障害を持つ子供たちのためのワークショップを企画していた。そんなある日、美青の体にある異変が起こる…。
- デルフトの眺望 A View of Delft
- 現代アートを扱うギャラリーの営業部長として働くなづきは、弟のナナオと共に父が最期の時を過ごした施設<あじさいの家>を訪れた。二人で家路につく最中、父が亡くなるまでの数ヶ月のことを思い返す…。
- マドンナ Madonna
- アートギャラリーで働くあおいは、いつもタイミング悪くかかってくる母からの電話に悩まされていた。母が昔仕事場に飾っていた1枚のポストカード。そこに描かれた母と子の姿に、あおいは自然と母との記憶を思い出す…。
- 薔薇色の人生 La Vie en Rose
- 役所の窓口で働く派遣社員の柏原多恵子。そこにパスポートを申請しにきた御手洗由智。由智との出会いをきっかけに、何気なく過ぎていくだけだった多恵子の毎日が薔薇色に輝き始める…。
- 豪奢 Luxe
- 下倉紗季はIT起業家の谷地哲郎と密会を重ねていた。紗季に豪奢なブランド品を買い与える哲郎は、投資のために高額なアートも買い漁っていた。アートへの考え方の違いを感じつつも、紗季は哲郎との関係を続けてゆく…。
- 道 La Strada
- 美術業界において時代の寵児となっていた貴田翠には、忘れることのできない過去があった。それは、悲しい記憶と共にある「道」の風景。新表現芸術大賞の審査会場で翠の前に現れた作品には、その「道」が描かれていた…。
おすすめポイント
瑞々しい言葉で表現された絵画たち

本書だけでなく、原田マハさんの著書には実在するアート作品が数多く登場します。
文章中に挿絵はないのですが、原田マハさんはその豊かな表現力で作品の持つ魅力を言葉にして伝えています。
一つ一つの言葉からその作品を想像する過程で、「どんな作品なのだろう?見てみたい」という気持ちが高まっていきます。
読者はその作品のタイトルを検索し、実際の作品を目にします。
そして、作品を見ながら本文をもう一度読むのです。これがなんとも楽しい。
想像して楽しい。作品を観て楽しい。もう一度文章を味わって楽しい。
これは他の作家さんの本にはない、原田マハさんの著書ならではの魅力だと思います。その感覚が1冊で6回以上も楽しめる本書は、原田マハさんの魅力を最高に堪能できる1冊と言えます。
大切なものを思い出す心温まるストーリー

原田マハさんの描く登場人物は、いつも生き生きと人生を送っています。きっとバリバリと仕事をされてきた原田さんの生き方がそこに反映されているような気がします。
しかし、忙しい毎日を過ごす中で、6人の主人公たちは自分にとって大切なものの存在を忘れかけています。
家族とのつながり。心踊るような恋心。しまい込んだ過去の記憶。
彼女たちはアートを通じて、忘れかけていた大切なものを取り戻していきます。まるで、作品が彼女たちの後ろから肩を叩いて呼び止めてくれるかのように。
6つの物語は、シンプルで劇的な展開は見せません。(中にはあっと驚くものもありましたが)
しかし、どの物語も救いと希望を残して閉じられています。
そしてそれは、普段の忙しい生活の中で忘れていたあなたの大切なものをも思い起こさせてくれるかもしれません。
まとめ

今回は新潮社から原田マハさん著『常設展示室』をご紹介しました。
原田マハさんの魅了がしっかり堪能できるおすすめの一冊です。
これまで原田さんの本を読んだことのない人にはもちろん、長編しか読んだことないという人にもおすすめできます。
まさに、美術館に行った気分になれる他にはない読書体験が待っています。
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